- HIP HOPの5大要素ってなに?
- HIP HOPの起源はどこにある?
- 本当は9大要素って聞いたけれど本当?
- 4大精神って何?
このような疑問を持っている人は多いでしょう。
HIP HOPを楽しむうえで、基本となる5大要素や、その起源と歴史を理解しておくのは大切です。
本記事ではそのあたりを詳しく解説するので参考にしてください。
<ざっくりいうと>
HIP HOPの5大要素はラップ・DJ・グラフィティ・ブレイクダンス・知識の5つ
そもそもHIP HOPとは何か?
そもそもHIPHOPが何であるか、一度おさらいしておきましょう。
HIP HOPは1970年代のニューヨーク・サウスブロンクス発祥の「カルチャー」です。
当時のサウスブロンクスは典型的なスラム街で、主に貧困層の黒人が身を寄せ合っていました。
サウスブロンクスでの暮らしは決してハッピーなものではありません。
しかし彼らはそんな環境でも楽しみを見つけるため、「ブロックパーティー」を開催するようになりました。これは、自分でターンテーブルや音響装置を用意して、公園で踊ったり遊んだりするのです。
1973年8月11日、サウスブロンクスに住むDJクール・ハークは、妹のバースデーパーティーも兼ねたブロックパーティーを開催しました。妹のプレゼント代を稼ぐねらいがあった、とも言われます。
クールハークは「普通のDJとはちょっと違うことがしたいな」と考えて、ファンクをはじめとしたブラックミュージックを大音量で流しました。ちなみに当時のアメリカはディスコブーム。普通ならディスコっぽい音楽を流すべきなのですが、意表をついたチョイスが観衆にウケたようです。
そしてクールハークはこのとき、いわゆる「ブレイクビーツ」を作り出しています。
要するに2枚のターンテーブルを交代で回して、「ボーカルが入っていない部分だけ」を永続的に流し続けたのです。
このブレイクビーツ中に即興で歌ったり、あるいはダンスしたりするようになりました。
そしてこれがアフリカ・バンバータやフラッシュなどによって、アメリカ中に広められていきます。
そのなかで即興の歌はラップになり、踊りはブレイクダンスになり、現在のHIP HOPシーンの原型が形成されるようになりました。
HIP HOPの5大要素
HIP HOPの5大要素はずばり以下です。
- ラッピング
- DJ
- グラフィティ
- ブレイクダンス
- 知識
意外と「知識」というのが要素に入っています。これについて知っておくと、HIP HOPをより深く楽しめるでしょう。
またラップ=HIP HOPではなく、HIP HOPを形作るひとつの要素にしか過ぎないというのもわかりますね。
それぞれについて詳しく解説するので、参考にしてください。
ラッピング
HIP HOPといえば、やはりラップ、つまりラッピングですね。
韻を踏みながら、抑揚が小さいメロディーで歌唱する、誰もが知っているアレです。
ちなみにラップする人のことをMCと言いますが、これは「Microphone Controller」の略称です。
ラッピングは最初、ブロックパーティーでブレイクビーツが流れているさなかに、適当に喋ることからスタートしました。
それが徐々に歌唱法として確立され、今ではラップとして成立しています。
それを事前準備なしでやるのがフリースタイルラップに当たります。ラップのスキルを競い合うのがバトルと、こういうわけですね。
最近では詩を朗読するようにラップする「ポエトリー」などのスタイルも確立されつつあります。最近でいえばGADOROなどはポエトリーっぽいですね。
DJ
次はDJ(ディスクジョッキー)です。
ターンテーブルを使って音楽をかけて、会場を盛り上げるのが基本系。
また楽曲をミックスして新しい音楽体験を作り出すのも、DJの役割のひとつです。
ちなみにDJは以下のように派生します。
- クラブDJ:パーティーなどでシチュエーションにあった楽曲を流し、盛り上げる
- ターンテーブリスト:ターンテーブルをテクニカルに操り、技術を披露する
- ライブDJ(バンドDJ):ライブに参加し、ターンテーブルを使った演奏を披露する。サンプラーを使用することも。
- ホームDJ:自宅でDJとして活動する。主に音楽のミックスやライブ配信で活躍
もしDJに興味があるなら、上記から自分に合ったスタイルを探してみましょう。
ちなみにDJは、HIP HOPのすべての始まりとも言われています。先ほども触れたとおり、起源がクール・ハークによるDJプレイにあって、そのうえでラップやブレイクダンスが成立したという流れがあるからです。
グラフィティ
グラフィティとは、街中の壁や公共交通機関に描かれるアートのことです。
たとえば、これですね。
このようにスプレーなどを使って何らかのアートを残します。実際に見たことがある人も多いでしょう。
グラフィティを描く人は一般にライターと呼ばれます。
グラフィティは例のブロックパーティーがおこなわれたのと同時期に、ニューヨークで流行り始めました。
数多くのライターが活動し、そのなかにはのちに伝説となるミシェル・バスキアもいました。
一方で公共物に着色するというのは法的な問題があります。ニューヨークでは規制が強化され、一時は下火になりました。
しかしそれでもグラフィティは文化的に継承され、現代では世界各地で新しいアートが再生産され続けています。
ブレイクダンス
ブレイクダンスは、DJがかけるブレイクビーツに合わせてアクロバティックな動きを披露するダンススタイルのひとつです。
このように独特なステップを踏むのが特徴です。
さらに地面に背中をつけて足技を披露する「ウィンドミル」や、頭を軸にしてくるくる回転する「ヘッドスピン」などの大技があり、ド派手なパフォーマンスを体現します。
一言で言って非常にかっこいいダンスであり、憧れる人も多いでしょう。
知識
そして、知識もHIP HOPを構成する大切な要素のひとつです。
ここでいう知識とは、具体的に以下を示します。
- HIP HOPそのものに対する理解・造詣
- 社会問題や歴史に対する理解
- 政治的な心情・価値観
- ラップやブレイクダンスなどのテクニックetc.
このような知識をしっかりと持ち、HIP HOPを楽しもうというわけです。
もともとHIP HOPは知識をのぞく4大要素で成り立っているというのが、一般的な考え方でした。
しかしレジェンドDJのアフリカ・バンバータは、「HIP HOPを間違って解釈して、自分勝手なことをしないように、正しい知識を持たなければいけない」と考えました。
彼は「4大要素に知識を追加して5大要素として、あるべきHIP HOPの姿をみんなで守っていこう!」と伝えていったわけです。
そうして、現在は「HIP HOPの世界に生きるなら、しっかりと知識を持つことも大切だよね」という考えが持たれるようになりました。
【補足】9大要素と考える人もいる
上記では、HIP HOPを構成する5大要素を解説しました。
現在では4つではなく5つの要素からHIP HOPが成り立っていると考えるのが主流です。
一方で、「HIP HOPには9つの要素がある」と考える人も(主にアメリカに)います。
- ラッピング
- DJ
- グラフィティ
- ブレイクダンス
- 知識
そして、
- ビートボックス/口を使って、ドラムやDJの音を真似する
- ストリートファッション/スニーカーやジーンズ、パーカーなどを中心に形成されるHIP HOP独自のファッション
- ストリートの言葉/HIP HOPの世界独特の言語やスラング
- 起業家精神/自らのHIP HOPを軸に、社会的成功を収めようとする気持ち
この4つを入れて、HIP HOPだというわけです。
HIP HOPとその要素に関するよくある質問
本記事ではHIP HOPと4大要素に関して解説しました。ここではよくある質問に回答します。
- 4大要素じゃないの?
- 大麻は要素に入らないの?
- HIP HOPって不良だけのものなの?
- 4大精神って何?
これを踏まえておけば、さらにHIP HOPを深く楽しめるでしょう。
ぜひ興味を持って、読んでみてください。
4大要素じゃないの?
HIPHOPは4大要素で成り立つと考える人もいます。その場合は知識を除いた、ラッピング・DJ・グラフィティ・ブレイクダンスが要素だと捉えるケースが多いようです。
この解釈も決して間違いではありません。
ただしアフリカ・バンバータが残した「正しい知識を持って、HIP HOPを楽しもう」という要素を弾いてしまうのは、少しもったいないかもしれません。
大麻は要素に入らないの?
結論からいうと、大麻がHIP HOPの要素として語られることはほぼありません。
単にHIP HOPは大麻と「近い関係にあるだけ」です。
つまり「大麻を吸って、俺も仲間入りだぜ」なんてこと思っていたら大間違いなわけですね。
HIP HOPって不良だけのものなの?
結論からいうと、少なくとも日本においては、不良だけのものではありません。
特に近年はその傾向が顕著です。R-指定も、Authorityも、DOTAMAも不良というわけではないでしょう。
KTや胡蝶そらのような、アイドル的な要素を持つラッパーも現れました。
中には不良のラッパーもいますが、決して不良だけのものではありません。
関連記事▶︎HIPHOPは不良の文化?クラブやバトルに出るのは怖いこと?
4大精神とは何か?
HIP HOPには、4大精神と呼ばれるものもあります。
具体的には以下のとおりです。
- Unity(団結)
- Peace(平和)
- Love(愛)
- Having fun(楽しい)
わかりやすくいえば、「ブロンクス生まれの貧しい俺たちだけど、みんなで一つになって、素晴らしい時間を共有しよう」というわけです。
1970年代のアメリカは、貧困層と黒人にとって地獄のような時代でした。そのうえで語られる4つの精神には、かなり重いものがあります。
特に注目して欲しいのは、「暴力」や「罵倒」など、攻撃的な精神性が挙げられていない点です。
荒っぽく誤解されがちなHIP HOPですが、元々の精神はとても平和的なものです。
まとめ
本記事では、HIP HOPの5大要素に関して解説しました。
- ラッピング
- DJ
- グラフィティ
- ブレイクダンス
- 知識
この5つの要素からカルチャーが成り立っていることを理解しておくと、HIP HOPをより深く楽しめるでしょう。
もちろん、自分がカルチャーを体現するのもひとつ。ラップ、DJ、ブレイクダンス…自分に合った方法でHIP HOPを楽しみましょう。