絶賛炎上中FSLトライアウトの「悪口対決」はもしかしたらガチHIP HOPだったかもしれない

FSLトライアウトが、絶賛炎上しています

暴力的なシーンがあったり、そもそもラップしていなかったりしている点が、かなり批判されていまいました。

CIMAをはじめとした有名なラッパーが、批判とも取れるような発信をしており、良くも悪くも話題になっています。

ヘッズたちの意見を一言で言うと、「あれはHIP HOPじゃない」というものです。

しかしよくよく考えてみれば、「あれはガチのHIP HOPではないか?」と、筆者は思うようになりました。

なぜそのように感じたのか、本記事で解説します。

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目次

そもそもFSLトライアウトで何があったか

まず、FSLトライアウトが何であったかおさらいしましょう。

FSLトライアウトは、フリースタイルリーグ(FSL)や凱旋、戦極、真ADRENALINE、口喧嘩祭が合同で開催したイベントです。

全国からトライアウト受験者を集めて、FSL出場者を決める、といった趣旨ですね。要するに「人生変えたい奴は勝ち抜け」というわけです。

 

そこまでならまあ高校生ラップ選手権とか、閃光ライオットみたいなもので問題ないのですが、告知動画が物議を醸しました。

告知動画では、まともにラップをやっていないのがわかります。

MC同士で取っ組み合いになったり、有名ラッパーが一方的に前髪を掴んで引きずり回したりしています

有名なラッパーが(おそらく)トライアウト受験者を罵っており、なんだか弱いものいじめをしているようにも見えました。

 

そして注目したいのは、トライアウト第一ステージが「悪口対決」だったことです。

何の知らせもなくいきなり「相手と悪口を言い合え」と言われて、ラップではなく悪口を言いあう「試験」が行われたそう。

https://twitter.com/420M024/status/1684809594256990208

これはアツいMCバトルを期待しているヘッズに絶望を与えました。

筆者としても「なんで悪口の言い合いをする必要があるの」と、感じざるを得ませんでした。

「悪口対決」こそHIP HOPだったかもしれない

…と、思っていたのですが、もしかしたらこの「悪口対決」は、決して間違っていなかったかもしれません。

というよりもそもそも、ガチのHIP HOPだった可能性があります

ビートの鳴らない、小節によるターン制もない…それでいて、HIP HOPだと感じさせられる要素があるのです。

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ラップやHIP HOPの源流と呼ばれる「ダズンズ」では?

なぜなら、あの悪口対決が、ラップの源流と呼ばれる「ダズンズ」にかなり近いからです。

まずはダズンズが何か理解しましょう。これは、米国系アフリカ人のあいだで、長きにわたって伝えられてきた遊びの一種です。

観衆が取り囲むなか、1on1で、相手の母親の悪口を言い合います。MCバトルと違って、ビートや小節数の決まりはありません。

ただ単に、本当に母親の悪口を言い合います。

ダズンズを日本語訳した資料がないので、一部推測になりますが、例えば以下のような具合です。

 

A「お前のママは頭が悪いから、加湿器と除湿器を同時にかけるらしいな!」

B「それは、加湿器から出る蒸気で除湿器をキレイにしてるんだよ。ところでお前のママはもうババアだからセックスのときに加湿器でXXXを濡らすらしいな!」

A「あれは加湿器でXXXをXXXして、感度を上げているんだよ。お前のママはまだ若造だから、XXXを除湿器で乾かしているらしいな」

B「XXXが濡れやすいことの何が悪いんだよ、そもそも感度を上げなきゃいけないのは、お前のママがババアだってことだろ?」

A「違うね、セックスをより深く楽しもうとしているんだよ、すぐに濡らすビッチなお前のママと違ってな」

と言うようにお互いが、観客が感心するような言い回しで相手のママを悪く言い合います。そして本気で怒ったり、あるいは言い淀んだりしたほうが負け、というわけです。

ちなみに遊びであるにも関わらず、「本気で怒る」ことが敗北条件にされていることから、米国系アフリカ人にとって母親がいかに特別な存在であるかがうかがえますね。

 

実際に一人でやってみると、かなりむずかしくて奥が深い遊びであることがわかります。ただ相手に言い返すだけでもたいへんなのに、観客が喜びそうなワーディングをしなければいけません。

そして米国系アフリカ人たちは、自分がもっとも大切にしている母親がどんなに悪く言われようとも、クールに頭を回し続ける必要があります。

トライアウト≒ダズンズ

話をFSLトライアウトに戻しましょう。

第一ステージではビートもクソもねぇ状態で悪口対決をさせられたわけですが、これはDISの対象が母親ではなく本人であることを踏まえれば、ほぼほぼダズンズです。

FSLは、「ダズンズでこそ才能が測れる」と考えて、第一ステージをあのように設定したのかもしれません。

 

また「母親をDISる、そうされても我慢する」というのが日本人や日本のラップシーンにフィットしないから、本人に置き換えたのかもしれませんね。自分自身がディスられたら、当然腹も立ちますから、ダズンズが成立します。

ダズンズの性質を考えれば、「本気で怒ってしまう」「言い返せなくなった」ラッパーは、厳しく評価されたのかもしれません。そうするとACEが言っていた「余裕がねぇ、ダセェ」というセリフがなんだか意味のある言葉に聞こえます。

 

ダズンズはHIP HOPの源流にあたる遊びです。それがHIP HOP界の新しいスターを見つけるための取り組みで用いられているなら、何もおかしな話ではありません。

野球選手に50m走や遠投をやらせているようなものです

 

今のところ、FSLトライアウトの第一ステージは「HIP HOPじゃない」「意味がわからない」などと非難されています。しかし見方を変えれば現代的・日本的ダズンズを用いて、本当のスターを探そうとしているだけであって、本当は悪く言われることではないのかもしれません。

FSL側のラッパーもダズンズしていた?

今思えば、FSL側のラッパーも、トライアウト受験者とダズンズしていたのかもしれません。

告知動画では、ミステリオが「お前は1mmもイケてない」と、がーどまんが「お前が努力してこなかった結果がこれやねん」などと言っていました。

どういう文脈でそう言っているのだろう? と思ったのですが、以下のような流れだと、納得がいきます。

  1. 第一ステージはダズンズだと発表された
  2. 第二ステージに進むためには、何度かダズンズを勝ち抜かなければいけなかった
  3. しかし「FSLラッパーとダズンズし勝ったら、その瞬間に第二(第三)ステージに上げてやる」という抜け道が用意された
  4. 実際にFSLラッパーとの勝負を希望するトライアウト受験者がいて、(比較的勝てそうな?)ミステリオやがーどまんが対戦相手に指名された

そうではないとしたら、どちらかが喧嘩を売って、またどちらかがそれを勝って…という展開でしょうか。

このあたりが当たっていたかどうかは、FSLの本動画が公開されたあとに答え合わせしましょう。

そうはいっても事前に言っておくべき?

ただ、少し引っかかる部分はあります。「第一ステージはダズンズだ」と言っておいてもよかったのではないかということです。

まず、現代のHIP HOPといえば、何を思い浮かべるでしょうか? MCバトルが最初に浮かんで、そのあと音源やDJプレイのことが連想されるはずです。

おそらくFSLトライアウト受験者たちも、MCバトルをするものだと思っていたでしょう。しかしフタを開けるとダズンズだったわけで、これでは戸惑ってしまうでしょう。

 

一方で、「フリースタイルをやっているなら、そういう場面にも対応するべき」とか、「本当のスターならダズンズでも勝つべき」といった意見も、まあ筋が通っているように思います。

本当に判断がむずかしいところです。

今の所99:1くらいの割合で否定派が集まっているFSLトライアウトですが、そこまで踏まえて考えると、実は50:50で賛否両論になるくらいの内容なのかもしれません。

暴力は許されるか?

第一ステージに関しては、「ダズンズをやったのだ」というので、一応の説明はつけられるようにも思えます。

しかしFSLトライアウトの告知動画には、もうひとつ問題がありました。暴力で物事を進めようとしているように見えるのです

有名なラッパーが、トライアウト受験者らしき人物の髪の毛を引っ掴んだり、受験者同士で取っ組み合いになったりと、さながらブレイキングダウンでした。

これは「ダズンズだったから」では説明がつきませんね。ダズンズに「暴力を振るってよい」なんてルールはありません。

 

暴力が許されるかどうかでいえば、HIP HOPの性質から考えれば、許されないように思います。

そもそもHIP HOPはラッピングやDJをはじめとした5大要素(9大要素の説も)から成り立っており、そこに暴力は存在しません。ついでに大麻もありません。

MCバトルは「暴力での争い」を避けるための代替え手段だったという経緯があるし、ダズンズに至ってはただの遊びです。

 

その背景があるなかで、暴力が入り込んでくるのは、やはりHIP HOPに馴染まないように思います。

せっかくMCバトルのおかげで暴力が代替えされたのに、それをまた元に戻しているわけですが、歴史と時代に逆行していますよね。

 

ただこれも判断がむずかしいところで、ああいう暴力を取り入れることが、結果的にはHIP HOPの発展につながるのかもしれません。

HIP HOPを発展させたいなら、もちろんより多くの人たちに注目してもらえたほうがよいでしょう。そうすれば収益が上がるし、HIP HOPに興味を持つ人も出てくるし、よいことしかありません。

その代償に「暴力を行使するな」という批判を浴びるわけですが…

まとめ

「そもそもラップをしていない」と批判されたFSLトライアウト第一ステージだったのですが、あれをダズンズと捉えるのなら、ガチHIP HOPかもしれません。

何せラップやHIP HOPの源流となった伝統なので、これを第一ステージの「試験科目」にするのは、ある意味で適切だといえるでしょう。

ダズンズで勝つには、語彙力、言語力、ディスられても怒らない精神的なタフさが求められます。言い換えれば、次世代を担うラッパーの素質があるかどうか見極める時点で、意外とフィットしたリトマス試験紙なのかもしれません。

とはいえ、暴力や無告知が正しいかどうかは意見は分かれるところです。

そのあたりも含めて、本編動画が出たらしっかりと見極めたいですね。

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