【FSLトライアウトでも採用?】HIPHOPの音楽表現「ラップ」の起源、「ダズンズ」とは?

  • 「ダズンズ」ってなんだろう?
  • FSLトライアウトで使われたのもダズンズ?
  • ダズンズを練習すると、ラップが上手くなるって本当?

このように思っている人は多いでしょう。ダズンズは、HIP HOPとラップに深く関係している伝統、文化です。

ダズンズを理解すれば、ラップを聴くのがもっと楽しくなったり、自分自身のラップスキルが高まったりするかも。

今回は「ダズンズ」がどういうもので、どういう「遊び」なのかを解説します。ぜひ参考にしてください。


目次

HIP HOPの音楽表現「ラップ」の起源「ダズンズ」とは?

ダズンズとは、19世紀ごろ、アフリカ系アメリカ人のあいだで伝わってきた伝統的な「遊び」です。

聴衆に囲まれた二人が、1対1でお互いの母親の悪口を言い合い、先に言い返せなくなったり、カッなったりしたら負け。MCバトルみたいなものですね。

 

<ダズンズの一例>

A:「お前の母親は愚かだ。加湿器と除湿機を同時に使うらしいな」

B:「俺の母親は加湿器で新鮮な蒸気を入れて、除湿機で汚れた湿気を取っているだけだ。ところでお前の太っているから、ニューオリンズのクラブで踊ってたら、床底が抜けたらしいな」

A:「床底が抜けたのはクラブの作りが悪かっただけだ。お前の母親はビッチだからあだ名は『Honeycomb bitch(蜂の巣ババア)』らしいな」

B:「…………」

A:「言い返せなくなったから、お前の負けだ」

 

ダズンズが上手な人は、黒人仲間のなかで一定のリスペクトを集めていました。

また罵倒の対象が自分自身でなく母親なのは、黒人文化において母親というのが、すごく大切な存在だったからだと思われます。

ちなみにこの時代から「韻」の概念があり、それをうまく使いながら罵倒することは高く評価されていたようす。

といってもダズンズは、何も黒人同士で争うためのものではありません。白人の奴隷主の支配下に置かれている憂さ晴らしのための遊びでした。

また「白人による理不尽な扱いを耐え抜くためのメンタリティ」を育てるためにも使われていたようです。だから、敗北条件に「言い返せなくなった」だけでなく、「感情的になった」ことがあります。

ラップへのつながり

1865年、米国内での奴隷制度が完全廃止になりました。これにより黒人奴隷たちは(表向きの)の自由を手にします。

しかし奴隷制度が終わっても、ダズンズという習慣は、その面白さ、奥深さからか、後世に引き継がれることになりました。その後も黒人の貧困層の間で楽しまれ、「ラップ」としての形になっていきます。

そしてニューヨークのブロンクス地区でブレイクビーツが誕生。そこにラップが合わさって、HIPHOPの原型が誕生しました

HIPHOPの起源はブロンクスにありますが、さらにその原型は、1865年以前の黒人奴隷時代にある「ダズンズ」まで遡るわけです。

これは、HIPHOPやラップがカウンターカルチャーとして大切にされている理由とも言えるでしょう。

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FSLトライアウトでも「ダズンズ」が使われた?

ところで最近開催されたFSLトライアウトにおいて、その選抜方法に関して批判が集まりました。一次選抜は「ビートなしで相手を罵り合い、先に相手の持ち点をゼロにしたほうが勝ち」というルールでおこなわれます。

MCバトルといえば、ビートがあって、小節数が決まっていて、先攻後攻で順序よくラップを披露するものです。

しかし上記の選考方法では、そのすべてがなく、ただ言葉で殴り合うような状態でした。

これに対してTwitterなどでは、「いや、ラップでもなければMCバトルでもないじゃないか」といった批判が多数見受けられました。

 

ただし見方を変えれば、これはこれで間違えていなかったのかもしれません。

なぜならダズンズでラッパーとしての能力が測られるかもしれないからです。

ダズンズで勝つには、何が必要でしょうか?

まず、相手(の母親)を、言葉巧みに罵倒する言語化・表現・発想力が求められます。

そして「感情的になったら負け」なので、怒りをコントロールして、冷静でいる精神の強さも必要です。

さらにいかに相手(の母親)がクズかアピールしたり、自分のスキルを目立たせたりする「魅せ方」も知っておかなければいけません。

韻を踏んだり、言葉遊びをしたりする力も必要です。

そしてこれらをリアルタイムでおこなう頭の回転まで求められます。

つまりダズンズに強い人は、ものすごく格好良いのです。上記のことができるラッパーがいたら、その人はスターだといえるのではないでしょうか?

 

そう考えると、「スターの卵」をスクリーニングする、ダズンズ的な一次選抜は、HIP HOPシーンの次世代を担うラッパーを選ぶうえで、悪い方法ではなかったかもしれません。「ラップじゃない、HIPHOPじゃない」と一括りに批判するべきでないかもしれません。

とはいえバン仲村が出ていたり、明らかにブレイキングダウンを意識していたり、批判を免れ得ぬ部分もあったのですが……

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ダズンズでバトルスキルが高まる?

ところで筆者はラッパーとして、関西圏で活動しています。音源をリリースしたり、バトルに出たりして、一応それなりの知名度は獲得しているつもりです。

その経験からいえば、ダズンズは、バトルスキルを高めるうえで役立つかもしれません

なぜならダズンズで勝利するには、バトルスで必要となる能力が求められるからです。自分は感情的に取り乱すことなく、相手の母親を華麗にディスり、言い負かさなければいけません。

ここではいったん、バトルで必要なスキルが何か振り返ってみましょう。

  • ライム(韻)
  • フロー(歌い回し、乗せ方)
  • バイブス(勝ち気、勢い、信念)
  • トップオフザヘッド(即興性)
  • アンサー(相手の意見に言い返して論破する)
  • パンチライン(印象に残るフレーズ)
  • アティテュード(態度、立ち振る舞い)

これらの総合点で相手を上回る、もしくは何か一点で突き刺すことで、バトルに勝利できます。

ダズンズで磨けるスキル

そしてダズンズでは、上記のうちトップオブザヘッド・アンサー・パンチライン・アティテュードに関してスキルアップできます。

まずダズンズはフリースタイル形式でおこなわれるため、(自分がネタを仕込んだのでなければ)、即興の練習ができます。

そして基本的には相手からの母親DISを正当化、無効化しなければいけません。ここでアンサーが鍛えられるでしょう。

さらにダズンズで相手を圧倒するには、パンチライン、つまり母親に対する強烈な罵倒を繰り出さなければいけません。罵倒だけがパンチラインとは限りませんが、少なくとも強烈な印象を与えるフレーズを繰り出す練習には役立つでしょう。

アティテュードに関しては、「相手の話を冷静に聞き、感情的にならず、淡々とやり返す」というのが身につけられます。そういうスタイルでバトルをやりたいなら、ダズンズは練習として成り立つでしょう。

ダズンズではバイブスとフローが磨きにくい

一方で、ダズンズではバイブスとフローを磨きにくいはずです。

まずダズンズでは、感情的になると負け判定が出ます。つまりバイブス高めで怒鳴り散らしていると、「あ、怒ってるじゃん」となるわけです。これでは練習にはならないでしょう。

そしてフローは磨けそうにありません。そもそもダズンズにはビートがなく、ビートアプローチに基づくフローの練習をしようがないのです。

またフローよりも「どうやって母親をなじるか」が重要視されるので、どうしてもそちらに比重を置いて戦うことになります。

ダズンズにバイブスとフローは必要ではありません。だから、それらの練習にはならないでしょう。

ライムの練習はできなくもない

一応、ダズンズでは「ライムを踏むのがよし」とされているので、ライミングの練習にはなります。

しかし「アンサーすること」や「母親を上手にディスること」に重きが置かれている以上、ライムに対して割ける脳内のリソースが限られる点は否めません。

ライムの練習はできなくもないですが、少なくとも効率的なやり方ではないでしょう。

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まとめ

本記事ではラップもしくはHIP HOPの源流となったダズンズに関して解説しました

激しい差別に晒されていた黒人奴隷たちは、このようにダズンズをおこなうことでストレスを発散していました。同時に奴隷主の理不尽な仕打ちに逆上せず(そうすると殺されるため)、常にクールでいられる精神性を鍛えあっていたのです。

ラップというのは、やはり悲しいものなのかもしれません。

FSLでもダズンズに近しい選抜方式が取られました。それが正しいかどうかわかりませんが、あの形式だと、頭の回転や表現力など、およそ優秀なラッパーに求められるあらゆるものが測られるわけで、意外と理にかなったやり方だったのかもしれません。

実際、ダズンズで勝とうとなると、パンチラインやアンサー、メンタルコントロールなど、あらゆる能力が必要になります。そう考えればダズンズは、バトルスキルを高めるひとつの方法になるかもしれません。

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