- 最近MCバトルを見始めたけど、ルールがよくわからない
- 何を基準にして勝敗を決めるのだろう?
- 専門用語が多すぎてよくわからない
MCバトル初心者の人は上記のような疑問を持つことが多いでしょう。
スポーツのような明確な基準がないので、あいまいで理解しづらい部分も多いはず。
そこで本記事では下記について解説します。
- MCバトルにおける基本的なルール
- よりMCバトルを楽しめる勝敗を決める7つの要素
- 何を言ってるかわからない人向けのHIPHOP専門用語集
MCバトルについてわからないことがある人はぜひ参考にしてください。
MCバトルのルール
MCバトルのルールには、大きく分けて4つのポイントがあります。
- 8小節ごとでラップで悪口を言い合ったり、スキルを見せ付けたりする
- ビートはランダムで決まる
- 勝敗を決めるのは観客の歓声
- 陪審員が導入することも
要するに決められた小節数ごとで相手を攻撃して、「あーなんかこっちのほうがうまいしかっこいいな」と、より多くの人に思わせた方が勝ちです。
それぞれについて詳しく解説するので、参考にしてください。
MCバトルの基本は8小節2回ずつで悪口を言い合ったり、スキルを見せつけたりする
MCバトルの基本は、先攻と後攻で8小節2回ずつに分けて悪口を言い合ったり、スキルを披露したりすること。
その内容を総合的に判断して、勝つか負けるかを決めるのがMCバトルです。
試合の流れとしては、まず司会(マスターオブーセレモニー)が両者をステージに呼び込みます。
続いてDJがバトルに使用するビートを選択。
さらにラッパー同士でじゃんけん※1をさせて先攻と後攻を決めます。
改めてMCネームと先攻・後攻、小節数やターン数を決定して試合開始。
試合が終われば後述する観客の歓声量による判定、という流れです。
MCバトルは8小節2本が基本ですが、大きな大会のクライマックスでは8小節3本・4本を採用することも。
また16小節2本というスタイルもあります。普段の倍の尺でラップするので、高いスキルを求められます。
※1じゃんけんよりももっと格好いい決め方はないものか…
ビートはランダムで決まる
MCバトルではかならずDJによってビートが選択されます。
何を使用するかは、DJのその場の判断次第。つまりラッパー当人からすれば完全なランダムです。
つまり彼らはその瞬間に決められたビートに対して、ラップを乗せているわけですね。
このようにランダムで選ばれる中で、どのようにビートとマッチしたラップができるのかも、
勝敗を決めるのは観客の歓声
どうやってMCバトルは勝ち負けがつけられるのか知らない人は多いでしょう。野球やサッカーと違い、得点という概念がなく、ピンとこないですよね。
MCバトルにおいて勝敗を決めるのは、基本的には観客の歓声です。
試合終了後、司会者はその場にいる人へ以下のように問いかけます。
- 「先攻⚪︎⚪︎を支持する人は歓声をあげてください」(歓声が上がる)
- 「後攻⚪︎⚪︎を支持する人は歓声をあげてください」「歓声が上がる」
そして司会者が歓声が大きかったほうに「勝者⚪︎⚪︎」と伝えます。
もし声量が同一だと判断された(両者の実力が拮抗していた)ら、決着がつかないとして引き分け再試合を行うことも。
陪審員制度を入れて二度判定をおこなうケースもある
陪審員制度が追加され、歓声による判定と含めて二度判定することもあります。
これはより正確なジャッジが求められるUMBやKOKなどの全国規模大会で採用される方式。
観客の中から無作為に選ばれた3〜7名(通常は奇数)を陪審員としてステージに上げ、判定を行います。
陪審員制度がある場合の判定は以下のとおり。
- 歓声での判定で、どちらのMCに「1票入れるか」を決める
- 陪審員の判定で、どちらのMCに「1票入るか」を決める
歓声と陪審員両方の判定で票を獲得すれば、そのラッパーは勝利となります。
しかし完成と陪審員の判定が割れて「1票vs1票」になった場合は、引き分けとして処理され延長戦が行われます。
審査員制度が用いられることも
さらに大きな大会では審査員制度が用いられることも。
これはHIPHOPシーンにおける著名なラッパーが、審査する形で勝敗を決めるものです。
フリースタイルダンジョンのシステムがこれに当たります。
ただし審査員制度は疑惑の判定が生まれやすく、ラッパーからも観客からも敬遠されるケースが少なくありません。基本的には観客の声援によるジャッジが好まれます。
MCバトルにおける勝敗を判断する基準は7つある
MCバトルにおいて勝敗を判断する基準は、大きく分けて7つあります。
- ライム(韻)
- フロー(歌い回し、乗せ方)
- バイブス(勝ち気、勢い、信念)
- トップオフザヘッド(即興性)
- アンサー(相手の意見に言い返して論破する)
- パンチライン(印象に残るフレーズ)
- アティテュード(態度、立ち振る舞い)
ただ悪口を言い合うのではなく、いろんな要素がMCバトルにはあります。
もちろん、すべてを理解してまるで審査員のように採点する必要はありません。
上記7つのうち、「自分はコレがかっこいいと感じる」という要素があるはずで、要するにそれに重きを置いてMCバトルを楽しめばよいわけです。
それぞれについて詳しく解説するので、参考にしてください。
ライム(韻)
ラッパーといえば、韻を踏む、つまり「ライムする」イメージが強いのではないでしょうか?
MCバトルでも、ライムは勝敗を判断するうえで重要な要素です。
そもそも「韻を踏む」とは、違う言葉同士で母音を揃えるというテクニック。
たとえば、「勝敗」と「状態」は、同じ母音を持っています(o-u-a-i)。
ただし、ただ踏むだけでは勝ちには結びつきません。
以下のように、高度に韻を踏むことで「ライム」が成立し、MCバトルでの勝利を引き寄せる要因となります。
- 長い文字数で韻を踏む:記憶に残る/地獄に落とす 金太郎飴/韻が超ヤベェ
- たくさん踏む:勝敗/脳内/後悔/教材/オーライ/正体
- 即興で踏む:相手が言ってきた言葉に対して、次のバースですぐ踏み返す(つまり、今ステージで考えてやっているとわかる)
- 意味を通して踏む:アンタとつけたい「勝敗」、そのあとさせてやるぜ「脳内」で「後悔」
こうやって韻にスキルやメッセージ性を与えることでライムが生まれます。
この要素はMCバトルにおいてもっとも格好よさが分かりやすく、初心者でもすぐに理解できるでしょう。
<ライムが得意なMC>
- R-指定(Creepy Nuts)
- 韻マン
- 烈固
- FORK(ICE BAHN)
- SAM
- バチスタ
関連記事:バチスタとはどんなラッパー?空音・TERUとのビーフの真相は?
フロー(歌い回し、乗せ方)
フローとは歌い回しのことです。
つまりどのようなリズム、声、雰囲気でラップするか、ということ。
ビートに合っていて、ノリのよいフローを披露した方が、当然ながら勝利に近づきます。
実はMCバトルで使われるビートは、「この世に存在するHIPHOP楽曲のインスト音源すべて」から、ランダムで選ばれています。
つまりラッパーたちは始まるまでに、何の曲がビートになるのか知りません。
にもかかわらずビートの雰囲気や曲調に合ったフローをやれば、「なんてすごいセンスなんだ」と評価してもらえるわけです。
高度な音楽性と即興性が求められるので、これを得意とするMCは貴重な存在。ただしライムやパンチラインと比較すると「分かりづらい」ので、勝敗に直結しないことも。
<フローが得意なMC>
- 句潤
- 藤Koos
- 鎮座DOPENESS
- ID
- 黄猿
バイブス(勝ち気、勢い、信念)
バイブスとは、一言で言えば相手を圧倒する勝ち気や勢いのことを示します。
たとえば大きな声で「お前を絶対に倒す!!」という気合を見せつけるとか、そういったものがバイブスと言えるでしょう。
しかし大声で叫ぶだけがバイブスではありません。
ちゃんと聞き手が「格好いい!」「イケてる生き様だ!」と思えるようなフレーズである必要があります。
そして、大声がなくてもバイブスは表現されます。
たとえば「俺は俺の信じていることをやり切るんだ」とか、「俺は仲間のためにも負けられないんだ」といったような決意を見せることもバイブスで、声量が大きい必要はありません。
わかりやすく言い換えればバイブスとは、「その人の心の中で燃えているもの」と言えるでしょう(それが大声で表現されることが多いだけ)。
バイブスは試合を決めるうえで重要な要素です。
バイブスを評価するか、それともただ大声だっただけなのかを考えて判定を出す必要があります。
<バイブスが高いMC>
- 般若
- NAIKA MC
- CIMA
- 輪入道
- ベル
トップオフザヘッド(即興性)
即興性は、いかに「今、この瞬間の判断でどれだけのことができているか」を示すものです。
即興の要素が多ければ多いほど、加点されやすくなります。
MCバトルは、やろうと思えばいくらでも準備することが可能です。
韻をたくさん覚えてきたり、相手の悪いとこを調べて持ち込んだりできます。
しかしそれよりも即興ですごいことをやるほうが、勝利に近づきやすいのです。
たとえば相手が「お前は”うるさいだけ”」とラップしたとします。
相手が何を言うかは自分には予測できない中で、すぐさま「”うるさいだけ”? お前のやる気が”少ないだけ”、優勝賞金で”振る舞い酒”」と即興で返せば、「なんて頭の回転の速さだ!」という感動を与えられるわけです。
<トップオフザヘッドが得意なMC>
- 呂布カルマ
- SHOICHIRO
- RAWAXXX
- 早雲
- Authority
関連記事:ラッパー・早雲のプロフィール・身長を解説!ベルと揉めた!?黄猿とは大丈夫?
アンサー(相手の意見に反論して論破する)
アンサーも、勝敗を決定づける大切な要因のひとつです。
これは、対戦相手の言っていることにどれだけ言い返せているか、ということ。
たとえば相手が、「お前は見た目ばっかり格好つけてダサい」と言ったとしましょう。
そこで「本物のラッパーっていうのは中身だけではなく見た目にもこだわる」と答えれば、これがアンサーとなるわけです。
つまり「口喧嘩できているかできていないか」で、うまく言い負かせば「アンサーがよかった」ということで評価されます。
ちなみに、アンサーにはアンサーが返ってきます。
上の例でいえば「中身だけではなく見た目にもこだわる」と言われて、さらに「見た目にこだわるのがダメなんじゃなくて、中身がダサいのがダメだと言っている」とアンサーすることも可能です。
こうしてどっちの言っていることが正しいのか判断するのが、MCバトルの楽しみ方だと言えるでしょう。
<アンサーが得意なMC>
- 呂布カルマ
- NAIKA MC
- じょう
- 早雲
- GOMESS
パンチライン(印象に残るフレーズ)
パンチラインとは、印象に残るフレーズのを意味します。
これは観客が大きく盛り上がる瞬間であり、勝敗を決定づける重要なポイント。
あまりにも有効なパンチラインが出たら、その一発で試合が決まってしまうこともあります。
具体例として以下が挙げられるでしょう。
- 長くて格好いい韻を即興で踏んだ
- 相手の意見に対して、ものすごく正確に論破した
- とても格好よく、聞いていて気持ちのよいフローを見せた
- リリカルな表現で盛り上げた
- そのほか、とにかく忘れられないほど印象深いフレージングがあった
パンチラインは、MCバトルを見る最大の理由とも言えるでしょう。HIP-HOPには、「食らう」という言葉があります。
これはパンチラインを聴いて「すごい!」と感銘を受けること。時にはその場でのけぞってしまうほどの衝撃を受けることもあります。
生涯忘れられないほどのインパクトを受けることもあり、ぜひともこの体験をMCバトルから感じてほしいところです。
<パンチラインが得意なMC>
- ニガリa.k.a赤い稲妻
- 呂布カルマ
- 輪入道
- 般若
- DOTAMA
アティテュード(態度、立ち振る舞い)
アティテュードとは、一言で言えば「ステージ上での立ち振る舞い」のことです。
ラップの内容だけではなく、どんな姿勢で相手と向き合っていたか、相手のバース中にどんなスタンスでいたかが問われます。
たとえば対戦相手が大声で怒鳴ってきたときに、びっくりして後ろに下がっていたら、格好悪いですよね。
しかし微動だにせずにいたり逆に「なんだ、この野郎」とにじり寄ったりすれば、バチバチしてかっこいいよく見えます。
このようにステージ上で起こる出来事に対して、自分なりの姿勢を取るのがアティテュード。
これひとつで大きな試合が決まったり、大きな加点がなされたりすることはありません。
しかしカッコ悪いところを見せて、それだけでとんでもない失点になることもあります。
だからこそラッパーはステージ上で、常に戦い続ける姿勢を示すことが重要です。
<アティテュードがかっこいいMC>
- 晋平太
- ベル
- 歩歩(違う意味で格好いい)
- 呂布カルマ(いつもクール)
- CIMA
MCバトルで「どこを重視すべきか」というルールは特にない
MCバトルにおいて、「どこを重視すべきか」というルールは特に存在しません。
強いて言うなら「自分がかっこいい、やばい」と感じた素直な体験を重視するべきです。
例えば聞き心地の良いフローが好きな人もいれば、しっかりと対話するラッパーを好む人もいます。
「韻がなければラップじゃない」というヘッズもいれば、「とにかくバイブスが最優先」だという人もいるわけです。
要するに、自分の価値観に基づいて、どちらを支持するのか決めましょう。
ただ、日本のMCバトルでは、ややアンサーやライムが重視され、フローやアティテュードはさほどでもない傾向にあります。
別にこの基準に合わせて判断する必要はありませんが、この事実を知っておけばよくわからない勝敗にも納得感が持てるかもしれません。
MCバトルでよく出てくるHIPHOP用語の意味一覧!これを見れば内容が理解できる!
MCバトルを見ているとき、正直「何を言っているのかわからない」と感じることもあるでしょう。HIP-HOPの専門用語が数多く出てきて、メッセージを理解できないからです。
そこで今回はMCバトルでよく出てくる言葉とその意味を一覧にまとめました。わからない単語があればチェックしてみましょう。
- a.k.a→「またの名を」の意味。つまり漢は「またの名をGAMI」ということ。
- クリミナル(Criminal)→犯罪的、危ない
- サイファー→:路上にラッパーたちが集まり、お互いにラップを披露する集まりのこと
- ドープ(DOPE)→よい意味でヤバい
- ハスラー→大麻愛好者
- プチョヘンザ(Put your hands up)→手を挙げろ
- プロップス→そのラッパーが今までの活動で集めてきたファンからの支持
- マイメン→親友、仲間、友達
- レペゼン→そのラッパーが背負っている地元のこと
- ワック(WACK)→ヘタクソ、ダサい
- 58→ほとんどのライブハウスで使われているマイク「SHURE SM58」の略称
MCバトルやそのルールに関するよくある質問
本記事ではMCバトルについて詳しく解説しました。最後によくある質問にQandAの形式で解凍します。
- MCバトルとラップバトルの違いは?
- UMBとかKOKとか戦極って何?
- 自分にもMCバトルはできる?どこに行けば参戦できる?
- 先攻がビートを選んだり、小節数を決めたりするのはなんで?
それぞれについて詳しく解説するので、参考にしてください。
MCバトルとラップバトルの違いは?
MCバトルとラップバトルに違いはなく、どちらも同じものを指します。ただし一般的にはMCバトル、もしくは単に「バトル」と呼ばれます。
UMBとかKOKとか戦極って何?
UMBやKOKといった単語は、国内における代表的なMCバトルトーナメントのことです。
- UMB=ULTIMATE MC BATTLE。日本でもっとも権威ある全国大会。部活で言うインターハイに当たる。
- KOK=KING OF KINGS。UMBと並んでもっとも権威ある全国大会。
- 戦極=戦極MC Battle→「正社員」という人物によって運営されている大規模なMCバトルトーナメント。
そのほかにも以下のような大会が有名です。
- 凱旋MC Battle→「怨念JAP」という人物によって運営されている大規模なMCバトルトーナメント。
- MCBattle THE 罵倒→MCバトルで禁忌とされるボディタッチが認められている大会。
- ENTER MC Battle/SPOT LIGHT→韻踏合組合によって主催される大阪のMCバトルトーナメント。
自分にもMCバトルはできる?どこに行けば参戦できる?
誰でもMCバトルに挑戦することが可能です。最初はむずかしいかもしれませんが、慣れれば誰にでもできます。
といっても、いきなりMCバトルに出場するのは怖いかもしれません。
最近はバトル練習用の動画などもアップされているので、それで腕を磨きましょう。
MCバトルにエントリーしたい場合は、とりあえずTwitterで地元にあるクラブやライブハウス、そしてHIP-HOPイベントの開催者をフォローしましょう。
すぐに自分でも参戦できるトーナメントを見つけられるはずです。
先攻がビートを選んだり、小節数を決めたりするのはなんで?
不公平をなくすためです。
MCバトルは先攻が不利なゲームです。相手の言っていることに即興で言い返したりして、自分の技術をアピールする機会が、後攻よりもひとつ少なくなるから。
また後攻がラップして試合が終わるため、どうしても「最後を締めくくった側が主役に見えてしまう」という側面もあります。
一部の大会ではこのバランスの悪さを軽減するため、先攻に以下の権限を与えて調整します。
- 複数の提示されるビートから自分が得意なものを選択できる
- 8小節でのターン制か16小節でのターン制かを選択できる
後攻は先攻側が決めた条件下でバトルを進めることになるので、有利性がやや失われます。
まとめ:
本記事ではMCバトルのルールや勝敗を分けるポイントについて解説しました。
ただ悪口を言い合っているだけではなく、ライムしたり、即興でアンサーを返したり、そこには高度な競技性があります。
本記事を参考に、それぞれのMCが自身のラップにどのような技術やメッセージ性、あるいは信念を込めているのかチェックしてみましょう。
といっても、そこまでむずかしく考える必要はありません。
MCバトルを見ていると、「ライムが好き」「アンサーしているのがかっこいい」といった具合に自分なりに響くポイントがあるはず。
そういった点を追いかけるだけでも、MCバトルはじゅうぶんに楽しめます。