まだR-指定がUMB3連覇を成し遂げる前の時代。
2011年、記念すべき第一回大会が行われた戦極MC BATTLEにて、チプルソというラッパーが大活躍していました。
今でもその頃の動画は、ある意味での伝説として残っています。
他のラッパーとは完成度がケタ外れに違うライミングと、相手と喧嘩になりかねない攻撃的な姿勢。
DOTAMAや晋平太、そしてR-指定さえも苦しめたそのラップセンスは、当時は驚きを持って受け止められました。
彼のことを「懐かしいな」と思う人もいれば、「そんな昔のラッパーのことは知らない」という人も多いでしょう。
そして彼は終始、ミステリアスな男であり、リスナーには大きな謎を残して去っていきました。
そこで本記事では以下について解説します。
- ラッパー・チプルソの基本情報
- 生い立ちや名前の由来
- ラッパーとしての活躍
彼のことをもっとよく知りたい人は、ぜひ参考にしてください。
ラッパー・チプルソの基本情報
- 本名:非公開
- 年齢:36歳(2022年現在)
- 誕生日:1986年?月?日
- 身長:170cm
- レペゼン:大阪(緑地公園)
チプルソは自分自身の情報についてほとんど発信することのない人物でした。
今かろうじてわかるのは、年齢と身長、そして緑地公園をレペゼンしていたことだけです。
これまでの生い立ちと経歴は暗い
チプルソの生い立ちは、一般的な視点から見ればかなり暗いものです。
1986年、大阪府内で生まれた彼は、小学校にまったく馴染めず、対人関係に苦しみます。
なんと3年生というかなり早い段階で引きこもり生活を始めました。
中学校・高校でもほとんど学校には通わず、家でギターやゲーム、そして小説を読みふける毎日を過ごします。
これが現在の彼にとってのラッパー・アーティストとしての素地になったのかもしれません
2007年、成人式の日に友達がチプルソの家へやってきて、半ば無理やりに彼を外へと連れ出しました。
それをきっかけに、チプルソは長い引きこもり生活から脱却。
彼にとってこの友達のアクションは、人生を変えるきっかだったと言えるでしょう。
その後、また友達周りからHIP-HOPを教えてもらい、自らもプレイヤーとしてのキャリアをスタートさせます。
得意だったのは、もちろんMCバトル。
毎日6〜8時間にもおよぶ練習のすえに圧倒的なスキルを手に入れ、戦極などの主要大会を総なめ。
2011年にはUMB本戦にも出場。
当時はどうしようもうなく、バカみたいに強かった晋平太を相手に熱戦を繰り広げるなどの活躍を残しています。
しかし2013年ごろ、つまりMCバトルがようやくブームになってきた時点でバトルシーンには出て来なくなりました。
本人にも思うところはたくさんあるのでしょうが、多くの人が彼の再登場を願っています。
チプルソという名前の意味や由来
チプルソという名前の由来は、解離性障害(いわゆる多重人格)の英語名「マルチプルパーソナリティ」に由来します。
なぜ解離性障害から名前を持ってきたかというと、どうもチプルソ本人がこの病気を患っているから、とのこと。
あくまでも解離性障害が事実ならですが、チプルソの中には二人以上の人格があって、それが代わりばんこに彼の心と体を支配しているのかもしれません。
ちなみにこの病気は、「ものすごく大きなストレスを受けたときに発症する」と言われています。
もしかしたら幼少期に、たいへんな出来事があったのかもしれません。
チプルソのInstagramとTwitter
Instagram:tpls.medical_music
Twitter:なし
当たり前のようにチプルソはTwitterアカウントを持っていません。
が、なぜかInstagramだけはありました。
なんとなく孤独でさみしいイメージがあるチプルソ。
しかしインスタグラムでは、仲間とともに楽しく過ごす様子が見て取れます。
彼の生い立ちを知る筆者からすれば、勝手にほっとしています。
チプルソに関するその他の隠された情報
チプルソはヒューマンビートボックスが異常にうまいことでも知られています。
日本のヒューマンビートボックスプレイヤーとしては、太華などが挙げられますが、チプルソも負けてはいけません。
さらにギターを弾き語りしながらラップミュージックするというスタイルも披露。
MCバトルだけではなく、一人のアーティストとして類稀な才能を発揮しています。
ラッパー・チプルソのバトルについて
近年は現場では見かけられませんが、ラッパー、チプルソのバトルについては語るところが多いです。
バトルスタイルやベストバウトについて紹介するので、順番に見ていきましょう。
チプルソのバトルスタイル
チプルソのバトルスタイルは、とにかく韻。
それも持ち込んできた「ネタ」としての韻が、彼のバトルスタイルの中心にあります。
このクオリティがとんでもなく高く「ネタか、ネタでないか」の論争が馬鹿らしくなるレベルでかっこいいのです。
一例を挙げると、
- 「ウォルトディズニー/モルトウィスキー」
- 「公共広告機構/速攻報告しよう」
- 「そんなにラップが一方通行じゃ/うならねぇぜHIPHOP中毒者」
とにかく硬いわ長いわかっこいいわ、誰も思いつかないわでたまりません。
これに対抗できるのは、今も昔もR-指定くらいのものではないでしょうか?
また、「あ、この人は相手と仲良くする気がないんだな」と一発でわかる攻撃的な態度も魅力。
「死ねや!」「ボケが!」「キッショ!」などと怒鳴り散らして対戦相手を追い込むスタイルは、むしろ見ていて清々しいものがあります。
おそらくフィジカル的にはさほどでもない彼ですが、裏でボコられようが何されようが関係ない、という覚悟を感じられないでしょうか?
リズム感やフローも最低限持ち合わせていて、ある意味安心して聞いていられるのもチプルソの隠れた魅力です。
また「噛む」こともあまりなく、完成度が高いラッパーだと言えるでしょう。
チプルソのベストバウト
チプルソのベストバウトは…本音を言えばほぼ全部なのですが、有名なところでは以下が挙げられるでしょう。
- 戦極MC BATTLE第5章 チプルソ vs SIMON JAP
- 戦慄MC BATTLE Vol.20 チプルソ vs e.K.y
- 戦極MC BATTLE .第5章 チプルソ vs TK Da 黒ぶち
それぞれについて詳しく解説するので、参考にしてください。
戦極MC BATTLE第5章 チプルソ vs SIMON JAP
「あっちのサイモンのほうがやっぱりかっこいいもん」
チプルソといえばこの試合、多くの少年たちをHip-hopとそして韻の沼にハメこんだ一戦でした。
「全然ダメ/1000年早ぇ」や「一方通行じゃ/HIPHOP中毒者」など、現代の水準でもハイレベルな韻を打ち込みます。
さらに「下手くそリストラ、韻もBadフローもBad Disもミクロサイズ」ととにかく批判しまくり、「いっさい仲良くなる気はないんだな」というのが伝わってくる内容でした。
最後にはアホみたいに怖いSIMON JAP相手に「俺はバトルでここまで来たんじゃボケ!!!」とブチギレ。
この時のチプルソはまさしく全盛期で、あのR-指定ですら太刀打ちが難しい状態でした。
鬼のような剣幕と「ネタかネタじゃないか」の論争がアホらしくなるようなライムの格好良さ。
このバトルだけは、Hip-hopやバトルが好きならかならず見ておく必要があるでしょう。
戦慄MC BATTLE Vol.20 チプルソ vs e.K.y
意味わからんねん!お前死ねや!
まだ戦極MC BATTLEが「戦慄MC BATTLE」と呼ばれていた時代のバトルです。
武道館でやっている戦極が、まだ小さなクラブで開催されていた時代。
当時は大人気だったe.k.yと、決勝戦で当たりました。
先攻に立ったチプルソは「韻なしフロウなし、空回りバイブス」などと口汚く罵ります。
その後e.k.yは「こいつのライムはネタばっかり、アンサーを返せ」といった趣旨のことをラップしました。
その直後に、「先攻でアンサー返せってなんやねん!お前死ねや!」「俺のラップがネタみたい?それは埼玉のヘタクソの妬み界」と痛烈に言い返します。
やはりいっさい仲良くなる気のないスタンスがかっこいいですね。
その後も、
- 模索中/お陀仏
- 立場なし/立ち話/恥さらし
- 長所もない/超しょうもない
などと踏み明かし、DISり散らかして優勝しました。
本当にライムの完成度は一級品で、いかにもチプルソらしいマッチアップです。
戦極MC BATTLE .第5章 チプルソ vs TK Da 黒ぶち
「だってTKはいいところですぐ音を上げる」
まだTK da 黒ぶちが太っていた時代のこと。
この頃からTK da 黒ぶちは持ち前のスピーディーなフロウで圧倒的な人気を博していました。
この大会でも優勝候補と目されており、チプルソとの戦いはさらに注目されることに。
フタを開けてみれば、チプルソがひたすらTK da 黒ぶちを殴り殺す展開に。
「俺は仕事して働いてるんだぜ」という彼に対してチプルソは、
- 「仕事のことなんか聞いてない、お前ラップでいくら稼いどんねんボケ!」
- 「ラップだけで食えないヤツをチャンピオンにしていいんかな?」
- 「回答真面目、TKはラップバトル才能ないね」
- 「ただいまTK抹殺中」
と言いたい放題。
「死ね」と「ボケ」が本当によく似合うMCです。
TKも言葉を返してはいるのですが、どうしてもチプルソの勢いが強すぎるせいで弁明のように聞こえてしまいます。
徹頭徹尾ボロカスにDisったうえ、「Twitterで速攻報告しよう/公共広告機構」など、チプルソ製のライミングも爆発し圧勝してしまいました。
今も昔もバカみたいに強いしラップも上手いTKですが、この頃のチプルソはやはりどうしようもない強さでした。
【補足】もしチプルソがMCバトルに復帰したら?
かなり現実味の薄い妄想ですが、チプルソがMCバトルに復帰したらとんでもない騒ぎになるでしょう。
たとえば戦極MC BATTLEに参加するとなれば、チケットは飛ぶように売れるはずです。
チプルソ対誰かのマッチアップにはどのカードよりも熱視線が送られ、登場の際にはとても大きな歓声が巻き起こるはず。
そして絶対に100%、戦国公式がYouTubeに動画をアップします。
ついでに相手のMCの知名度もぐっと高くなるはず。
おそらくチプルソは勝つでしょう、そしてベスト4くらいまで行くか、あるいは優勝するはずです。
UMBに参戦すれば、まず間違いなく本戦にまでたどりつきます。
さすがの彼でもカンタンには獲れないのがUMBですが、普通にベスト8くらいまでは行きそうです。
ラッパー・チプルソの音源について
えげつない完成度の韻と攻撃的なスタイルと裏腹に、チプルソの音源は割としっとりしています。
先ほども触れましたがチプルソの生い立ちあるいは人生は、決して明るいものではありません。
小学校3年生から学校に馴染めず、家で引きこもる生活を続けていました。
しかし今ではこんなふうにやさしくて心穏やかな楽曲を作ってくれるので、古くからのファンは一安心といったところです。
関連記事:バチスタとはどんなラッパー?空音・TERUとのビーフの真相は?
まとめ
2011年ごろ、まだ、戦極MC BATTLEの第一回が開催されていた時期。
当時はまだ成長途上だったMCバトルの世界で、チプルソという男が明らかに異常な空気を醸し出していました。
彼のライミングと攻撃的なスタイルで、多くの少年がラップに目覚めたのは間違いありません。
もう10年近くバトルの現場からは遠ざかり、最近では音源で活躍しています。
そしてやはりというか音源もかなり完成度が高いので、ぜひチェックしてみましょう。
彼の生い立ちは、控えめに見ても影のあるものですが、最近では笑顔も見せてくれるようになり、古くからのファンとしては一安心といったところ。
仲間に囲まれて楽しそうです。
ただ欲を言うなら、もう一度バトルの現場に出てきてくれれば…というところ。
いつか現役バリバリの若手MCと、レジェンドであるチプルソのマッチアップが見れればよいなと、筆者は夢見ています。