医療の場面で使われる大麻として、「医療大麻」というものがあります。
世界中で医療大麻について研究、言及がなされているので、聞いたことがあるという人も多いでしょう。
とはいえ、
- 「医療大麻とは具体的にどんなものなのか?」
- 「医療大麻が何をもたらすのか?」
- 「日本で合法化するのか、しないのか?」
というような、細かい疑問を持っている人もいるはずです。
本記事では、医療大麻の概要や効果、今後における展望などについて、詳しく解説します。
医療大麻とは何か?
概要については理解している人も多いかもしれませんが、念のため、おさらいしておきましょう。
医療大麻とは、医療の現場で使われるように作られた、特別な大麻のことです。
大麻に含まれている70種類の成分を、治療に用います。
代表的な成分としては、THC(テトラヒドロカンナビノール)やCBD(カンナビノイド)、カンナビクロメンなど。
医療で用いる薬としては非常に優れており、副作用も決して危険視されるものではありません。
副作用の少なさから、最初に投与するものとして望ましいとする意見もあります。
また、現存する医療薬では治せなかったものも、医療大麻でなら治せる、という可能性も。
製造も容易かつ安価であり、世界中が医療大麻に期待を寄せています。
ただ、法規制により、あまり広くは普及していません。
2017年ごろから、ようやく本格的な普及が始まりました。
現在では、多くの国(特に大麻合法国)で、医療大麻は使われています。
知っている人も多いかもしれませんが、残念ながら日本では、医療大麻は禁止されています。
参考:( 国連事務総長(アントニオ・グテーレス氏)への手紙、日本維持新報社)
医療大麻に期待される効果
医療大麻の効果は、かなり大きなものであると見られています。
実に250種類以上の疾患に対して、「効果が期待できる」とされています。
ただしあくまでも期待できる、というものであり、「かならず効果が出る」というわけではありません。
下記では、医療大麻による改善が期待されている代表的な疾患を紹介します。
内科、外科的疾患に対して
以下のような疾患に対して、医療大麻が有効であるとされています。
- 筋ジストロフィー
- 緑内障
- メニエール病
- 椎間板ヘルニアなど
- HIV
- ヘルペス
- 群発頭痛
- 狭心症など
比較的、治療の難しい疾患に対して、効果があるとされています。
精神的疾患に対して
精神的疾患にも、医療効果は広く効果を発揮するとされています。
- うつ病
- 双極性障害
- 統合失調症
- 不安障害
- アルペルガー症候群(自閉傾向)
- 各種依存症(煙草、コカイン、アンフェタミンなど)
- 不安神経症
- PTSDなど
というように、現代において問題視されがちな、多くの精神的疾患へと影響を与えます。
がんに対して
劇的と呼べるほどではないですが、医療大麻は以下のようながんにも効果を示すという研究結果が出ています。
- 口腔がん
- 膵臓がん
- 乳がん
- 前立腺がん
- 肺がん
医療大麻の研究が進めば、がん治療も大きく進歩するかもしれません。
その他の作用
また、医療大麻はさまざまな身体的、精神的効果をもたらします。
- 鎮痛
- 抗不安
- 制吐(吐き気をおさえる)
- 炎症をおさえる
といった効果があると、認められています。
こういった効果を活かして、緩和ケアや対症療法のひとつとして、医療大麻が用いられることもあります。
(引用:Cannabidiol, a Cannabis sativa constituent, as an antipsychotic drug)
実例はあるのか?
医療大麻の効果が出たという実例は、数多く報告されています。
世界各国で研究がなされ、効果が発揮された実例は、枚挙に暇がありません。
また医療大麻ではなく、合法的な大麻成分を含んだ製品(オイルやグミ)などにも、「効果があった」と述べる人がいます。
これについては、参考URLが明るいです。
(参考、世界各国の医療大麻の政策と実践、日本カンナビノイド学会)
医療大麻の効果は高い、しかし副作用やデメリットはある?
上述のとおり、医療大麻は効果が高いと評価されています。
一方で、副作用などのデメリットがないわけでありません。
医療大麻がもたらす副作用としては、以下のようなものが挙げられます。
- 不安症
- 疲労感
- 吐き気
ただ、他の薬にも見られる副作用なので、医療大麻が厳しく規制される理由にはなりません。
日本における医療大麻の普及、合法化について
気になるのは、「日本で医療大麻が普及するか」、あるいは「合法化がなされるか」というところでしょう。
この点について、詳しく解説します。
現状
日本における医療大麻の普及、合法化は、まだ現実味がないと言わざるを得ません。
未だに大麻に含まれている「THC(テトラヒドロカンナビジオール)」へ対する抵抗が強く、受け入れられるような基盤は整っていません。
普及どころか、そもそも合法化そのものが難しい状態です。
海外では大規模かつ頻繁だった「合法化を目的とした運動」も、日本においては散発的なものです。
合法化に向けた積極的な国会の動きも見受けられません。
識者によっては、「大麻によって国民の生産性が落ちるから、日本は合法化を認めたくない」とも述べます。
つまり日本という国家を維持するうえで、大麻は認められないと考えられているわけです。
日本古来の文化が、合法化を遅らせている
一部の識者は、「日本の文化自体が、合法化を遅らせている」と語ります。
北中米やヨーロッパとは違い、日本は歴史上、大麻と関わることが少ない国でした。
古くから「大麻を吸う」という文化自体を、あまり持っていません。
したがって日本(あるいは日本人)は、諸外国ほど大麻を強く求めていません。
むしろ、大麻のことを知ることもなく、無条件に嫌う傾向すら認められます。
合法化に向けて、クリアすべき課題
日本において医療大麻が合法とされるまでには、課題をクリアしなければいけません。
当然のことですが、「大麻取締法」を改正する必要があります。
2020年2月現在の大麻取締法は、医療大麻に対し、厳しい規制をかけています。
医療現場で利用することはおろか、医療大麻そのものに対する研究さえ認められない状況です。
とにかく大麻取締法を改正しなければ、合法化はあり得ません。
少し前までは大麻取締法の改正は、ほとんど希望がない状態でした。
現在では、やや状況が変わり、改正に希望が持てるようになってきました。
WHOが医療大麻に対する態度を軟化しつつあるのです。
日本の大麻取締法は、WHOに沿って定められている法律です。
つまりWHOが医療大麻への認知を変えれば、日本も合法化へと傾くかもしれません。
また、アメリカが医療大麻に対して寛容な態度を示しつつあるのも、プラスの材料です。
すでにアメリカでは、20以上の州で、医療大麻を合法化しています。
そして、日本はアメリカが法改正すると、合わせて法改正するという習性があります。
つまりアメリカに合わせて、医療大麻を合法化するかもしれないと考えられるわけです。
来年、再来年に医療大麻が合法化する、ということはないでしょう。
しかし、合法化に向けた流れが、近年強まっているのは事実です。
いつごろ合法化されるのか?
明確に、いつ合法化される、という予定が立てられているわけではありません。
ただ、過去にあった法改正の傾向を見るに、大体5,6年後には合法化されているのではないか、と予想できます。
先ほど、日本はWHOやアメリカの法的解釈に沿って法改正をおこなう習性があると説明しました。
習性に基づいて法改正へ至るまで、大体5,6年を要してきました。
したがって、大麻の合法化も、5,6年で実施されるのではないか予測できるわけです。
ただし上述のとおり、日本は大麻に対してかなり強い抵抗を持っています。
また、推測にはなりますが、「製薬会社が大麻の合法化を嫌う」という傾向が、合法化を遅らせる可能性もあります。
というようなことを踏まえると、合法化の時期は、5,6年以上先にズレ込む可能性も否定できません。
少なくともすぐに法改正され、合法化されるとは考えづらいです。
もし医療大麻による治療を一刻も早く受けたいというのであれば、医療大麻合法国へ行くという方法があります。
合法国であれば、費用はかかりますが、日本人でも合法的に医療大麻が用いられた治療を受けられます。
重篤な病を患っている場合、医療大麻合法国で治療することが、命を救うことになるかもしれません。
まとめ
医療大麻は、さまざまな心身の疾患に対し、効果を発揮することがわかっています。
医療大麻の研究・普及が進めば、医療に進歩がもたらされ、よりよい治療が受けられるようになるかもしれません。
とはいえ、医療大麻は未だ研究段階にある存在です。
よりよい投薬方法が策定されるまでは、しばらく時間を要するでしょう。
また、日本においては、残念ながら合法化まで時間がかかると考えられます。
とはいえ世界各国が取るスタンスを鑑みれば、合法化は決して不可能ではありません。