大麻というものは、昔の日本と現在では、まったく立ち位置が違います。
現代日本において大麻は、「危険な薬物」として認知されています。
しかし昔の日本では、まったく違った扱い方がされていました。
とはいえ、昔の日本における大麻事情を詳しく知っている人は少ないでしょう。
本記事では、その点について詳しく解説しています。
昔の日本における大麻とは?
まずは昔の日本が、大麻とどのように向き合ってきたか解説します。
意外にも歴史は長く、そして日本人とのかかわりもかなり深いものでした。
最初期でのあり方
日本における大麻の歴史は、なんと縄文時代から始まっています。
縄文時代において大麻は、当時の日本人には欠かせないものでした。
彼らは大麻から採取した繊維を使い、
- 衣服
- 草履
- 釣り糸
などを作っていました。
漆や藍、稲などと並んで、広く使われていたようです。
栽培も盛んで、あちこちに麻畑が広がっていました。
ただしあくまでも「繊維素材」として扱われていたようです。
縄文時代の人々が、大麻を「吸うもの」としては考えていませんでした。
そもそも大麻を吸うと特別な体験が得られるということも知らなかったようです。
こういった扱いは、縄文時代から江戸時代へ至るまで継続しました。
和歌の文化が成り立ったころには、「麻」は季語として扱われています。
「万葉集」には、大麻のことを歌った歌が、数多く収録されています。
(参考:せんぐう館)
江戸時代
江戸時代には入って、日本人は「大麻の精神的効果」を知るようになります。
萬川集海という書物によれば、大麻は「阿呆薬」などと呼ばれていました。
ネーミングからもわかるとおり、「飲めば阿呆になる」と考えられていたというわけです。
要するに、あまりよい印象は持たれていなかったということ。
つまり江戸時代の段階でも、嗜好品としてはまったく注目されていません。
諸説ありますが、「忍者が大麻を活用して、活動していた」という逸話もあります。
大麻でターゲットを無力化し、任務遂行に役立てたのではないか、と考えられています。
また忍者の身体能力向上を期すため、「背丈の高い麻を飛び越える」という訓練もおこなわれていたそうです。
「神道」との関係
ほとんどの時代で、大麻は「神道」において、たいへん重用されていました。
当時の神道では、「大麻は神聖なものであり、邪(よこしま)を浄化する」という解釈がとおられていました。
したがって神道では、さまざまな場面で大麻の葉を活用するようになります。
祭事での捧げ物や神童家の衣服、厄除として幅広く使われていました。
もう少し具体的な例を紹介しておきましょう。
神社の鳥居に、捻られた繊維で作られた「しめ縄」が飾られているのを見たことはないでしょうか?
あれは「注連縄」といって大麻繊維から作られているものです。
注連縄を飾りあげることで、「厄除ができる」と考えていたようです。
というように神道では、大麻は欠かせないものとして扱われていました。
近代において
上述のように大麻は、嗜好品という形以外なら、広く使われていました。
近代に入ってから、大麻をめぐってさまざまな変化が起こります。
医療品として
近代においては、大麻は医薬品として使われるようになりました。
大麻は「印度大麻草」と呼ばれ、鎮静剤やアレルギー治療薬として重用されていたようです。
漢方薬として使われていた、というような報告もあります。
また、喘息の発作を止めるものとしても、一定数は需要がありました。
「喘息たばこ」などというネーミングで発売され、しかもそれは陸軍医師が使用を推奨していました。
この時代は、医薬品としての大麻がもっとも普及していたタイミングです。
関連記事:医療大麻がもたらす効果と、 日本における合法化と普及について
大麻の禁止
しかし1945年、古くから使われていた大麻は、歴史の裏側へ追いやられることになりました。
日本が第二次世界大戦に敗北したあと、GHQが日本を占領します。
GHQは、日本に対して大麻の全面禁止を強要しました。
大麻を規制することで、代替え品について米国からの輸入に頼らざるを得なくするためです。
要するに大麻が規制されているのは、「アメリカが儲かりたいから」というのが発端だというわけです。
そして戦後から3年経った1948年、「大麻取締法」が制定。
以後、日本においては大麻取締法の元、大麻がほぼ完全なかたちで淘汰されました。
現在は認可を受けた農家のみが大麻を栽培する、という仕組みになっています。
認可を受けている農家はわずか30程度で、大麻栽培はたいへん小規模です。
(参考:ニコニコニュースoriginal)
なぜ大麻は禁止されているのか?
歴史を見るにあたって、大麻は日本人と切っても切れない関係がありました。
日常や医療、そして神道において、広く使われているものでした。
GHQが企んだ「日本を米国輸出に依存させる」という目論見もすでに達成され、もはや大麻を規制する必要も、ほとんどないように思えます。
しかし現在でも、大麻を所持・栽培することは、固く禁じられています。
表向きは「大麻はたいへん危険な薬物だから禁じられている」ととらえられています。
ですが、あくまでも表向きの理由にしかすぎません。
確かに大麻には多少の危険性があるのは事実です。
とはいえ、禁止されている理由は、それだけではありません。
大麻を解禁してしまうと、明らかに日本全体の労働意欲が著しく低下してしまいます。
要するに大麻は、日本経済を害するというわけです。
だから大麻を厳しく禁じている、という理屈です。
ただしこれはあくまでも「数ある説のひとつ」にしかすぎません。
他にも「利権を守るため」というような見方もあります。
関連:医療大麻がもたらす効果と、 日本における合法化と普及について
嗜好品として使われていた時代はある?
過去の日本において、大麻を嗜好品として使っているという様子はほとんど見受けられません。
先ほども触れたとおり大麻は「阿呆薬」などと呼ばれ、どちらかと言えば危険なものとして認識されていたようです。
ごく一部の地域で嗜好品として吸われていた、というケースも考えられますが、取り立てて歴史に残るような規模ではありません。
また、日本に自生している大麻は、精神作用を引き起こす成分濃度が低いものでした。
したがって嗜好品として成立するほどの特別な体験はできなかったようです。
昔の日本のように、大麻が受け入れられる時代は来るのか?
昔の日本とは違い、現在は大麻がまったく受け入れれられていません。
しかし時代の流れを考えるなら、大麻が再び日の目を見ることになる可能性もあります。
フェーズ移行
日本で大麻が受け入れられる時代は、少しずつ近づいてきています。
現在、世界中で「医療大麻」が受け入れられはじめました。
かつては医療大麻さえも禁じられていたので、これだけでも大きな進歩です。
そして「嗜好大麻」も、わずかながら受け入れられつつあります。
大麻の普及については、「フェーズ」があると言われています。
フェーズは、
- 政府が国民に対して、「大麻は危険なもの」だと喧伝し、大麻を追放する
- 国民が大麻の必要性に気付き、政府へ反発する
- 医療大麻が解禁される(昔の日本における水準)
- 嗜好大麻が部分的に解禁される
- 嗜好大麻が完全に解放され、課税対象となる
という風に進行するものです。
数十年前まで、ほとんどの国は「1」か「2」のフェーズにありました。
しかし現在は医療大麻が普及しはじめ、「3」のフェーズへ突入する国が次々に登場。
カナダやコロンビア、オランダあたりは嗜好大麻を認めはじめているので、「4」ないし「5」のフェーズに到達しています。
日本については、残念ながら「1」で停滞しています。
医療大麻の普及はおろか、「大麻は危険」だという師説がまん延している状態です。
「大麻は解禁すべきだ!」という論陣を張る人間も、ほとんど存在しません。
しかし日本は、基本的にはその他の先進国の動向を、わかりやすく言えば「真似る」傾向があります。
つまり「フェーズが進行している先進国を真似して、日本でもフェーズが進行する」、という見方もできるというわけです。
「昔の日本に戻る」というのは、「医療大麻が解禁されるフェーズ『3』」に到達することとほぼ同義でしょう。
「3」までであれば、数年の間に到達できる可能性はあります。
さらに数年もすれば、「4」もしくは「5」のフェーズに入る日が来るかもしれません。
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ハームリダクションの波及
また、「ハームリダクション」の影響も無視できません。
ハームリダクションが進行すれば、日本でも大麻は当たり前の存在になるかもしれません。
ハームリダクションとは、簡単に言えば「麻薬や大麻による害を完全に除去するのは諦め、『低減させる』」という考え方です。
わかりやすく言えば、「禁煙は辛いから減煙する」というような考え方。
知ってのとおり、世界中ではヘロインやコカイン、合成麻薬など危険性の高い薬物がまん延しています。
そこで考え出されたのがハームリダクション。
ハームリダクションにより、ヘロインやコカインのようないわゆる「ハードドラッグ」ではなく、せめて「ソフトドラッグ」を使おうというような気運が高まっているわけです。
つまりソフトドラッグに該当する「大麻」は、ある意味で許されるかもしれない、ということ。
もしハームリダクションが大麻を認めるのであれば、日本でも大麻がありふれた存在になるかもしれません。
実はハームリダクション自体は、1970年代ごろから欧米諸国で盛んに取り入れられてきた考え方です。
ハームリダクションの理論は、長い時間をかけてブラッシュアップされ、今日へ至ります。
さらにハームリダクションが有効化すれば、大麻の立ち位置もさらに変化するでしょう。
(参考:国際ハームリダクション協会)
まとめ
かつて日本という国は、大麻という植物と深い関わりを持っていました。
縫製、狩猟で用いられ、神道では神聖なものとして祭り上げられました。
近代では医薬品として、一定の地位を築いています。
そして今という日本は、「大麻の必要性」をすっかり忘れてしまった時代です。
一言で言えばGHQや政府の思惑が原因で、大麻は危険な薬物として排除されてしまっています。
しかし、大麻が人間にとって(医薬品としても嗜好品としても)素晴らしいものであることは変わりません。
時間はかかるかもしれませんが、日本でも大麻が当たり前のように見かけられる時代が近づいています。