「大麻と麻薬では何が違うの?」という疑問は、本当によく挙げられます。
なんとなく疑問を持ちながらも、多くの人はわからないまま放置しているのではないでしょうか?
本記事では大麻と麻薬の違いを、さまざまな角度から分析します。
大麻と麻薬の違いを知っておくことは、自分自身の身を守る上でも重要です。
ぜひ、参考にしてください。
大麻と麻薬の違い
大麻と麻薬の違いは、一言で言えば「何の植物を原材料としているか」という点に集約されます。
あとは法律的には、麻薬と大麻は同じものとして扱われています(取締る法律だけは違う)。
厳密に言えば「麻薬の一種が大麻」という解釈です。
しかし法律的に同じだと言っても、実態はもう少し複雑です。
(参考:厚生労働省)
そもそも大麻草とは
そもそも大麻草が何なのか、おさえておきましょう。
大麻草とは、いわゆる「麻(アサ)」のこと。
衣類の素材に「麻」がありますが、植物としてはそれとまったく同一です。
原産国は中央アジアですが、今では世界中で栽培されています。
大麻とは?
大麻草の葉っぱを集めて、固めて樹脂にしたり、乾燥させたものが「大麻」です。
大麻の葉っぱには、いわゆる「ハイになれる」成分が含まれています。
つまり大麻と言えば、かならず葉っぱの部分が使われているということです。
ちなみに、古くは漢方薬としても用いられていました。
喘息やアトピーなどの治療を目的として使われていたようです。
後ほど詳しく解説しますが、大麻には著しい依存性・中毒性・有害性が認められていません。
世界各国もそのことを理解し、続々と大麻を合法化しています。
麻薬とは?
麻薬は、基本的には「ケシ」という植物を原材料にした薬物のことです。
ケシの果実に穴を開けると、どろっとした液体が出てきます。
液体にはいわゆる「あへん」が含まれており、それを抽出したものが「麻薬」です。
具体的にヘロインやモルヒネ、コデインという名前で流通しています。
あへんの有害性や中毒性は、一般的に知らされているとおり。
そしてケシが原材料ではないものも、麻薬として分類されています。
大麻を含めて、コカイン(コカの木)やLSDなども麻薬という扱いです。
大麻以外の有害性、中毒性は、一般的に知られているとおり、非常に危険なものです。
もっともポピュラーな麻薬である、ヘロインを例に考えてみましょう。
ヘロインを摂取すると、
- この世のすべての幸せを集めても、とうてい及ばない多幸感
- 身体中の細胞が、オーガズムの数万倍におよぶ気持ち良さを得ている感覚
- 人間が本来体験するはずのない快感がつむじからつま先までを駆け巡る
という効果が現れます。
ケシ、という植物の恐ろしさが理解できるでしょう。
アメリカのロックバンド「ガンズアンドローゼス」のメンバーも、一度ヘロイン漬けになり、解散寸前まで追い込まれました。
しかし一度効果が切れてしまうと、
- 骨という骨が砕け散るような痛み
- 地獄のような不快感、渇望
- 金属バットで殴りつけられるかのような頭痛
- おぞましい虫たちが体の穴という穴から入り込んでくる錯覚
といった「禁断症状」が訪れます。
禁断症状を脱するには、もう一度ヘロインを摂取するしかありません。
自然に禁断症状が抜けるのを、多くは待っていられないのです。
次第にヘロインのことだけを考えるようになり、ヘロインのためだけに生きるようになります。
そしてヘロインは、過剰摂取すると死ぬ可能性があります。
ドラマ「glee」に出演したハリウッドスター、「コリー・モンティス」は、ヘロインの過剰摂取にて、31歳という若さで死亡しました。
大麻の安全性と薬理効果について
上述したとおり、ヘロインをはじめとした麻薬は、服用者を地獄へ落としうるものです。
しかし大麻は、その他麻薬と明らかに区別されます。
先ほども触れたとおり、大麻は極めて安全性の高いものです。
なぜヘロインなどと同じく「麻薬」と分類されるのか、不思議に感じられるほど。
下記では大麻の安全性、および薬理効果について詳しく解説します。
大麻の安全性
大麻が安全であるということは、
- 中毒性(依存性)
- 有害性
というふたつの観点から、ある程度説明がつきます。
まずは中毒性について。
大麻の中毒性は、あらゆる物質の中でも極めて低い位置にあると判明しています。
米国の公衆衛生長官だったJocelyn Elders氏によれば、「大麻に依存性はない」とのことです。
薬学博士のジャック・ヘニングフィールドの実験によれば、大麻の依存性はカフェインと同じようなレベルでした。
(参考:gigazine)
ふたつ目は有害性について。
麻薬を摂取すれば、明らかな有害性が生じるというのは、先ほどヘロインを例に挙げて説明したとおりです。
麻薬の種別によって有害性には多少の違いがありますが、いずれにしても看過できるレベルではありません。
しかし大麻の有害性は、麻薬と比較するとあまりにも矮小です。
せいぜいが、
- ときおり「バッドトリップ」に入り、気分を悪くする
- 青年期の者が摂取すると、将来的にうつ病となるリスクが上がる
- 眠気、だるさなどの副作用が発生する
という程度です。
薬理効果(薬理作用)
大麻の薬理効果は、ほとんど「カンナビノイド」という大麻由来成分が原因になっています。
カンナビノイドとは、一言で言えば「大麻特有の化学物質」のこと。
大麻草は、50種類以上のカンナビノイドを有します。
そしてカンナビノイドは、脳内の「カンナビノイド受容体」を刺激するもの。
カンナビノイドが刺激された結果、「ハイになる」とか「感性が鋭くなる」といった、スペシャルな体験がもたらされるわけです。
もう少し詳しく言えばカンナビノイドは、「神経細胞(neuron)」をはたらかせます。
神経細胞がはたらくと、簡単に言えば、感覚や意識は敏感になるというわけです。
要するに大麻は、「よりさまざまなことを鋭く感じ、そして考えるようになる」という効果をもたらしているとも言い換えられます。
ちなみに大麻の薬理効果は、麻薬とはまったく違います。
麻薬に含まれているのは、たいていはオピオイド系の化学物質。
麻薬は基本的には「オピオイド受容体」をはたらかせます。
オピオイド受容体が麻薬に刺激されることの重大性は、大麻のそれとは比べものになりません。
オピオイド受容体が麻薬に刺激されると、強烈な快感を感じられます。
そして同時に、強烈な依存性を形成します。
すると心身は、(簡易的に表現するならば)「麻薬がなければ、生きていけない」という錯覚を起こします。
いわゆる「薬効耐性」が生じるというわけです。
この段階で言えば体外から見れば「薬物依存症」となっています。
あとは薬効耐性による衝動と禁断症状、そして麻薬をやめなければいけないという倫理観のはざまで苦しむ、というわけです。
そして無計画に麻薬を摂取した結果、化学物質は致死量へ到達し、命を落とすというケースもあります。
というように、大麻と麻薬の薬理効果はまったく違うというわけです。
これを理解しておけば、「大麻と麻薬の危険性は同程度でない」という主張にも納得できるでしょう。
(参考:京都大学)
なぜ大麻が、麻薬と一緒に厳しく禁止されているのか?
上述で、大麻の危険性がさほどでもないことは理解してもらえたと思います。
にもかかわらず、大麻は日本において、厳しく規制されています。
「なぜこれほどまでに大麻は麻薬と同一視され、厳しく禁止されているのか?」という疑問を覚えた人も多いでしょう。
実はこの問題について、明確な答えというものは存在しません。
しかし、ひとつの可能性として、「利権の保護」が考えられるでしょう。
大麻は娯楽目的ではなく、医療目的でも利用されます。
そして医療効果は高く、既存薬品では治療できない疾患まで治療できる可能性があるとされています。
しかし大麻が医療目的で利用されると、既存薬品の需要は低減するわけです。
つまり既存薬品の利権を保護するため、大麻は厳しく取り締まられている、という見方が出てきます。
実際、日本においては、大麻を医療薬として研究することさえ認めていません。
(関連:医療大麻が日本で合法化される日は来るのか? 海外ではどうなっている?)
大麻産業の衰退について
とはいえ、かつての日本では、大麻は「産業」と呼べる程度には普及していました。
GHQ占領下に入る前までは、漢方薬や治療薬、あるいは神事の献上物として、大麻は必要とされていたのです。
しかしGHQ占領下に入った直後から、大麻産業は衰退の一途を辿ります。
当時日本で普及していた大麻は、「日本産の特別な大麻」として考えられていました。
そうでない大麻は「印度大麻草」と呼ばれ、両者は明確に区別されていたのです。
しかしGHQは、「日本産だろうが海外産だろうが大麻は大麻である」という見解を示します(そしてこの見解は、化学式レベルで正解でした)。
GHQは「大麻禁止令」を発令、大麻産業は表社会から消滅しました。
そのあとも昭和23年に「大麻取締法」の制定などがあり、大麻産業は衰退しきってしまいました。
2020年現在も、その状況に変化はありません。
大麻を生産できるのは国から認可を受けた一部の栽培業者のみで、「産業」と呼ぶにはほど遠い状態です。
まとめ
大麻と麻薬の違いは、原材料となる植物にあります。
大麻は麻、麻薬はケシを原材料としています。
ただし法律的には、「麻薬の一種が大麻」であり、それに準ずる限りでは大麻と麻薬に違いはありません。
しかしあくまでも法律上の話であり、実情はまったく違います。
たとえば大麻と(大麻を含まない)麻薬では、依存性や有害性は天地ほどの差があります。
薬理効果もまったく異なり、ほとんど別物と言って問題ないレベルです。
なぜか日本においては、「大麻は麻薬であり、危険だ!」という主張がまかりとおっています。
しかし本当にその主張が真実を述べているかどうか、考える余地はじゅうぶんすぎるほどあるでしょう。